<日経新聞「年金繰下げ・就労で収入増」の取材に協力しました>
(2020月11月14日付け朝刊)
2020年6月に成立した年金法改正では、2022年4月から年金は75歳まで繰り下げ受給ができるようになり、75歳まで繰り下げて受給すると84%増額される、とのことです。
現行法では、70歳まで繰下げ受給が可能で、70歳まで繰り下げて受給すると42%増額されます
つまり、65歳から年金をもらい始めると200万円の年金額の人が、70歳からもらい始めると284万円になるというものです(42%増)。
また、65歳から年金をもらい始めると200万円の年金額の人が、75歳からもらい始めると368万円になるというものです(84%増)。
年額200万円の年金ということは、月々16.7万円の年金ですが、年額368万円の年金ということは、月々30.6万円の年金ということになります。大卒の初任給を超える金額です。かなり優雅な年金額です。働かなくても十分に暮らしていける年金額です。
記者の取材に対して、私は次のように答えています。
「東京都で社会保険労務士として働く澤木明氏は今年8月に70歳になり、繰り下げた老齢年金を受給し始めた。『受給額は42%増えて年300万円ほどになった。75歳まで繰下げができたなら利用していたのに』と残念そうに話す。」
この私のコメントを読んで、みなさんはどのように思われますか?
実は、70歳まで繰下げて受給する人は、わずか1%くらいしかいないそうです。100人のうち1人です。なぜそのように少ないのでしょうか?
70歳まで繰下げて受給しようとしてガマンして我慢して待って、70歳直前で死んでしまうと年金を1円も受給できずにこの世を去ることになります。とても後悔することになります。自分が何歳まで長生きするかわからないからなのです。
もうひとつの理由は、70歳まで年金をもらわずにどのようにして生活費を確保するかが問題だからです。
しかし、多くの社会保険労務士やファイナンシャルプランナーは、70歳まで繰下げて受給することを勧めています。長生きのリスクに備えることができるからです。
ところが、多くの社会保険労務士やファイナンシャルプランナーは、75歳まで繰下げて受給することまでは勧めていません。なぜなら、75歳まで繰下げて受給した場合の「損益分岐点」が87歳だからです。
長生きのリスクに備えるには、年金の繰下げ受給はお勧めですが、せいぜい70歳繰下げが妥当のようです。