「PLAN75」という映画を観てきました。

plan75


plan75

「75歳を過ぎたら、個人が死を選ぶことができ、国が安楽死を援助してくれる」という日本の近未来を想像した恐ろしい映画です。
高齢を理由にホテルの客室清掃の仕事を解雇され、生活に困窮した角谷ミチ(78歳)が、PLAN75を選択し、安楽死を選ぶことになるというストーリーです。
倍賞千恵子さんが角谷ミチ役を好演しています。
「男はつらいよ」で寅さんの妹役さくらの印象が強いので、「他人事(ひとごと))ではない、と感じさせます。さくらが、自ら安楽死を選ぶなんて、と思うと悲しくなります。
ミチはやさしく思いやりがあり、からだは元気で働く意欲もあるのに、なぜ死を選ばなければならないのか、強い理不尽さを感じます。
ところが、今後の日本の行く末を考えると、現実味が見えてきます。
少子高齢化の影響で年金の額が減っていくことは避けられません。
まして勤労期間が短く、専業主婦の期間が長い人は、老齢基礎年金しかもらえません。40年間保険料を払い続けても、年額78万円弱です。月々6万5千円程度です。
これでは、仮にアパートの家賃が3万円~4万円であっても、とても生きていくことはできません。
ただし、夫婦世帯で、40年くらい働いた夫が亡くなった場合は、遺族厚生年金が月7万円くらいもらえますので、老齢基礎年金と合わせて、月13万5千円くらいになり、ぜいたくしなければ何とか生活できます。さらに生命保険から3,000万円くらい保険金がおりれば、さらに老後は安泰になります。

しかし、遺族厚生年金ももらえないし、生命保険から保険金ももらえなければ、老後は困窮生活に陥ります。
働くスキルと意欲と健康が保たれていれば、勤労収入と老齢基礎年金だけでも十分生きていけるでしょうが、それらがないとすると生きていくのに厳しい状況になります。
一方、日本には生活保護制度があるので、PLAN75制度があっても、生活困窮者が死を選ばなくても生き続ける権利は保障されています。日本は、映画が描くほど、冷たい国ではないと思います。将来どうなるかわかりませんが、日本がそれほどひどい国になることは想像できません。
とすると、PLAN75は、誰が利用することになるでしょうか?
例えば、治る見込みのない病気にかかったとき、75歳以上であれば、国が安楽死をお手伝いしましょう、という制度設計であれば、、PLAN75制度があってもいいのかな、と思います。むしろ、そういう制度ができることを願っている人もいると思います。しかし、こういう設定の映画では面白くないですね。
「人を殺して、死刑になりたい」と言って、多くの人の命を奪う人がいますが、そういう人には人を殺す前に安楽死を選ぶ権利を与えたらいいの思うのですが・・・? そういう人はPLAN75を利用しないでしょうね。
私なら、寝たきりになって胃ろうなどの延命治療に頼ることになったとき、公的医療保険制度に負担をかけることになるので、PLAN75制度を利用したいな、と思っています。公的医療保険制度は財政難にあえいでいます。
みなさんはどのように考えますか?